NOTE 003 LAB NOTE

ノートアプリ再考

AIが文章を整えてくれる時代に、整える前の自分の言葉を置く場所として、ノートアプリを捉え直します。

ObsidianやNotionを開き、考えたことや調べたことを残している。AIを使うようになってからは、書き散らした文章の整理も、長い資料の要約も、内容ごとの分類も、短い指示で終わるようになった。以前なら手を動かしながら考えていた時間を、別のことへ使える。便利になったはずだった。

ところが、AIと一緒にノートを整え始めると、自分で整理することが少しずつ面倒になる。それなら全部任せればよいと、実際に任せてみる。文章はきれいになり、分類され、見出しも付いて、あとから読み返しやすい形になる。それでも画面を眺めていると、何が大事だったのか、自分は何を残したかったのかが、かえって分からなくなってきた。

情報は残っている。けれど、そこに自分がいない。

整ったノートから、自分が消える

AIに整理を任せること自体が問題なのではない。検索しやすくし、重複をまとめ、他者にも伝わる文章へ直すことは、ノートを活用するうえで大きな助けになる。ただ、ノートには情報を保存する役割だけでなく、まだ名前のない考えに触れるための役割もある。

言葉が足りない。話が途中で変わる。結論がない。同じことを何度も書く。そうした粗さは、公開する文章では削ったほうがよいかもしれない。けれど自分のためのノートでは、その揺れのなかに、何に引っかかり、どこで迷い、何を言おうとしていたのかが残っている。整っていない部分は、単なるノイズではなく、思考が動いた跡でもある。

整理の前と後を分ける

そこで、AIのためのノートと、自分のためのノートを分けてみようと思った。AIのためのノートには、参照した資料や、要約、分類、あとから使うために整えた知識を置く。一方、自分のためのノートには、思いついたことを、思いついたまま書く。格好をつけた言い回しも、誰かに見てもらうための読みやすさも求めない。

これは、人間かAIかを選ぶ話ではない。分けたいのは役割であり、時間である。まず自分の言葉を置く。文章として届ける必要が生まれたときに、AIへ整理を任せる。AIを思考の入口に置くのではなく、表現を外へ運ぶ段階で使う。そうすれば、便利さを手放さずに、整える前の感覚も残せる。

書く前に、保存先を決めない

サイドバーに分類を並べ、タブを増やし、ディレクトリ構造を考える。情報管理のためには役立つ仕組みも、まだ形のない考えを書こうとするときには、最初の障壁になることがある。どこに保存するかを決めるには、それが将来何の役に立つのかを先に判断しなければならないからだ。

けれど、書く前には分からないことがある。むしろ、分からないから書く。あとから見返すことを前提にしなくてもよいし、気ままに書き殴ってもよい。必要なのは、情報を正しい棚へ収めるためのノートだけではなく、自分と向き合うための、何も要求してこない余白なのだと思う。

もう一度、ノートアプリをつくる

そんなことを考えながら、私はいま、改めてノートアプリを開発している。目指しているのは、毎日使うものだから見た目がきれいで、迷わず使えて、キーボードだけでも操作が完結するもの。PCで書いた内容をモバイル端末でも開き、モバイル端末で書いた続きをPCでも書けるものだ。

そう、原点に帰ってきたのかもしれない。

DESIGN DIRECTION

  • 思いついたとき、すぐに書き始められる
  • 書く前に分類や保存先を求めない
  • キーボードだけでも操作が完結する
  • PCとモバイルのあいだで続きを書ける
  • 必要なものを加え、書くことを邪魔するものを取り除く

多くの機能を備えた情報管理ツールではなく、思いついたときに開き、そのまま書けるシンプルなノートをつくりたい。まだ道半ばではあるが、必要なものを少しずつ加え、書くことを邪魔するものを取り除きながら育てている。

AIが文章を整えてくれる時代だからこそ、整える前の自分の言葉を置いておける場所がいる。ノートアプリを開くという小さな動作を、情報管理の入口ではなく、自分の考えに戻る入口にしたい。

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TheNote

この記事で考えたことを、実際のプロダクトとして形にしています。書くことに集中するための、シンプルなノートアプリです。

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